宮里藍のレッスンが受けられると期待して出かけていって、こんなアドバイスが飛んできたらあなたはどうするだろうか。
「みんな女優になってくださーい!」
昨年12月に仙台でジュニアクリニックを開催した時のこと、宮里は参加した高校生ゴルファーたちに向かってこう呼びかけていた。
ドライバーはこう打てとかスイング中の体の動きはどうだとか、そうした一般的なレッスンとはかけ離れたアドバイス。ただし、出し惜しみをしているわけではまったくない。この一言が確かに宮里のゴルフの真髄なのである。
自分で台本を書き、演じる――それが宮里藍流のメンタル術。
ホール間のインターバル、宮里はスコアカードに鉛筆を走らせる。そこにはスコアとは別に、暗号のように小さな数字が書き込まれている。たとえば「S55 P5」「S43 P4」といった具合に。
これはそのホールのプレーを一打ごとに5段階評価で自己採点したもの。Sはショット、Pはパット。ジャッジの基準となるのは「打った球がどこにいったかじゃなくて、自分に約束したことを最後までできたかどうか」である。
9番アイアンのハーフショットでグリーンのセンターを狙う。
7番アイアンのパンチショットでピンをまっすぐに攻める。
イメージがあいまいなままだったり、なんとしてもバーディーを取って追いつきたいなど余計な思考が入れば、結果はどうあれ点数は低くなる。
先のジュニアクリニックにおいても「違うクラブで10回、違うターゲットに打ってください」と指示を出した後、高校生が球を打つたびに「自分に約束したことをちゃんとキープできた?」「100%できた?」「なら、よし!」と声をかけていた。
一打ごとに台本を与えるのは自分自身。その筋書きを頭に焼き付け、ひとたびボールに向かえば決められた演技に徹する。それが宮里の流儀。だから女優という言葉が出てくるのである。
まるで体操やフィギュアの選手のようにプレーする宮里。
宮里は5年前の夏からプロコーチであるピア・ニールソンとリン・マリオットに師事してきた。彼女たちから学んだのは「ビジョン54」と呼ばれる思考法。米ツアー通算8度の賞金女王に輝いたアニカ・ソレンスタムらもこれを実践してきた。ショットごとの自己採点も、大スランプに陥っていた'08年頃に取り入れたメソッドである。
今の宮里を見ていると、スコアを競い合う対人競技ではなく、体操やフィギュアスケートと同じ採点競技としてゴルフを捉えているように感じる。
今季の米ツアーでの優勝争いにおいても、自分の力が及ぶ範囲と及ばない範囲をはっきりと区別していた。
「相手が良ければそれまでの話。とにかく自分は自分のベストを最後まで尽くすだけ。リーダーボードを見ても本当にただの情報として、自分の今の状況と切り離して相手のプレーを見られた」
世界1位のヤニ・ツェンらとの競り合いについても「それは自分にとっていいモチベーションにはなる」とさらりと言う程度なのだ。
目の前の一打に集中する。という言葉はあらゆるゴルファーが簡単に口にすることではあるが、宮里ほど高い次元でそれが実行できている選手はなかなかいないだろう。
コントロールできるのはショットを打つまでの自分自身のことだけ。ボールの跳ね方や転がりまでは制御しきれるものではないし、周りの選手のスコアなど当然動かしようもない。どうにもならないことに力を費やすのは無駄というある種の達観である。
「優勝のことは早く忘れたい」
今季日本ツアー初参戦となった、メジャー大会でもある「ワールドレディス・サロンパスカップ」でもそんな考え方の一端が垣間見られた。
宮里はその直前にハワイで行われた米ツアーで今季初優勝を飾って帰国した。だが、余勢を駆って試合に臨みたいと言うどころか、ブレーキをかけるかのごとく「優勝のことは早く忘れたい」と口にしたのだった。
「皆さんが連続優勝が懸かっていると煽るので(笑)」
「相手云々ではなく自分のゲームに集中できたのが優勝につながった要因。今週も基本的にはシンプルにプレーしたい。自信があっても調子がよくてもゴルフはスコアが出るとは限らない。そういう意識を横に置いておいて、いろいろなことにとらわれずにしっかりとプレーができればいい」
とらわれたくない「いろいろなこと」とは何だろうか。
「去年のこの試合はパットのミスが多かった。入る入らないにかかわらず、いいパットをしたいということ。あとはスコアや自分の置かれている状況。皆さんが2戦連続優勝が懸かっていると煽っているので(笑)。自分にとってもいい挑戦だし、日米での連続優勝はやってみたいことだけど、それはあくまでも試合が終わってからの話なんです」
今季の宮里は7試合に出場してトップ10を外したのはわずか1回!
5位と好発進した「ワールドレディス・サロンパスカップ」初日は、宮里が描くイメージがこちらに伝わってくるようなプレーぶりだった。同じリズムで淡々と、ミスする気配すらない。
特に前半はフェアウエーキープ率、パーオン率ともに100%のパーフェクトゴルフを展開。その充実ぶりは「4はいくつかあったけど3はなかった」という高い自己採点からもうかがえた。
しかし、「初日のことは忘れてゼロからスタートしたい」と話していたはずの2日目にコントロールが乱れた。
「初日にスコアが伸ばせた分、もう少し伸ばしたいという欲が出てしまった。その期待をどれだけ横に置いて集中できるかが大事だったのに」
最終日は前日の反省を踏まえて10位に踏みとどまると「納得のいくトップ10」と語った。
今シーズンの宮里は7試合に出場(米6、日1)してトップ10を外したのはわずか1回だけである。抜群の成績を残してはいるが、その1回は米メジャー初戦のクラフトナビスコ選手権。シーズン序盤のもっとも重要な試合でもあった。
今年の宮里にはメジャー制覇の野望がある。好調ゆえに膨らむ自分への期待もある。それらが「いつもの自分」を妨げる要因になり得る。
ロッテ選手権に続いて、凱旋試合として臨んだ今回の国内メジャー初戦(10位タイ)でも、あらためてそのことを実感したはずだ。
再び米国に戻った宮里はこれからメジャー大会の続く季節を迎える。大きな目標が達成できるかどうかは、女優宮里藍のこれからの演技力にかかっている。
なるほど!!
個人競技はあくまでも自分との戦い
それを
女優
という表現で表したわけか。。
宮里藍ちゃん
どこまで強くなるんだろう。。
とても楽しみだ。。
日本のアニカ・ソレンスタム
目指して頑張れ!!
幸せな結婚もね・・・
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